伊藤忠エネクス株式会社
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専門家かから見たDME

クリーンな新燃料として注目を集めるDME。専門家はどのように見ているのでしょうか。
伊藤忠エネクスなどと実用化に向け研究を進める独立行政法人産業技術総合研究所の後藤新一さんと、石油公団で、天然ガス有効利用技術研究プロジェクトチームの調査役を務める鈴木信市さんにお話をうかがいました。
 
独立行政法人 産業技術総合研究所 エネルギー利用研究部門 クリーン動力研究グループ グループ長・工学博士 後藤 新一さん独立行政法人 産業技術総合研究所 エネルギー利用研究部門 
クリーン動力研究グループ グループ長・工学博士
後藤 新一さん
 
■求められる受け皿の拡大
――なぜDMEが注目されているのでしょう?

世の中にはいろいろな燃料がありますが、水素を除き基本的にすべて炭素成分を含んでいます。つまり、燃やすとスモークが発生したり、燃焼にともなってNOxも出てきてしまうのです。
この点、DMEはいろいろな装置を付けることなくスモークを抑え、実質NOxの対策に集中することができます。これにより自動車などの排気ガスの大幅なクリーン化が実現できるわけです。
こうした利点を捉え、JFE、三菱ガス化学および伊藤忠といった企業がいち早く製造プラントを立ち上げる段階まで進んでいます。

 

――普及させるために必要なことは何ですか?

まずは、燃料として安く豊富に手に入る状況になるべきだと思います。たとえば、同じく環境負荷の小さい燃料としてCNGがありますが、少なくともこれと同等のコストレベルに到達しなければなりません。逆にそこまで行けば、数ある燃料の中で十分競争力のある存在になると思います。
次に燃料としての実績を示していくことです。現状DMEの商業ベースの利用は噴射剤に限られています。ですから、我々は燃料としてのDMEの実用化に向けて具体的な「モノ」を見せる段階に入ったと認識しています。8トンのDMEトラックを作ったり、10台規模のごみ収集車を作ろうとしているのはこの点をアピールするためです。
このほか流通面は法的に船舶で持ち運びができない課題もあります。しかし、製造プラントも徐々に立ち上がってきている現況を考えると何よりも需要開拓が不可欠ですね。

 
■リスク分散で高い潜在能力を秘める
――DMEは数ある燃料の中でどのような存在になっていくと思いますか?

今後50年ぐらいは引き続き石油や軽油がメジャーであることに変わりはないでしょう。ただし、ディーゼル車のように環境対策の一環として法規制がかかった分野などでは、その特長から十分入り込める余地があると思っています。
DMEの特長の一つに石炭やバイオマスを原料にできることがあります。これは中国など石炭がややもすると余っている国で有望な燃料となりえることを示しています。単なるクリーンな燃料というだけでなく、世界的なエネルギーリスクの分散にも貢献できるポテンシャルを秘めているのです。

 

――共にプロジェクトを進める伊藤忠エネクスにどのような期待がありますか?

一緒に仕事をして、すごくまじめだなという印象がありますし、LPG車などの燃料販売でメジャーという信頼感もあり頼もしいですね。DMEを自らボイラーに使う試みも始めていて、真剣に取り組んでいることが伝わってきます。
今、DMEを燃料として使うごみ収集車を一緒に開発しようとしているわけですが、ここでの貢献にも大いに期待しています。
そして、これは長期的な視点での要望になりますが、燃料としてDMEが軌道に乗ったらぜひ安価な値段で供給していただければと思います。価格面で確固たるメリットがあり、しかも環境負荷も小さい。DMEをぜひそんな存在にしてもらいたいですね。

 
石油公団 石油開発技術センター 天然ガス有効利用技術研究プロジェクトチーム 調査役 工学博士 鈴木 信市さん石油公団 石油開発技術センター 天然ガス有効利用技術
研究プロジェクトチーム 調査役
工学博士
鈴木 信市さん

――DMEが次世代エネルギーとして注目される理由は何でしょうか?

DME最大の特徴は、その使いやすさ・利用範囲の広さにあります。物性はLPガスに近く、現在は、燃料としてではなく、エアゾール噴射剤等として利用されています。燃料として見ると、セタン価(※1)の高さが特徴的です。平均的な軽油のセタン価が40〜55であるのに対して、DMEは55〜60。これはプレミアム軽油なみの性能で、ディーゼル燃料として期待できます。しかも、EGR(※2)を最大限に利用でき、軽油における最大の問題であるNOx(窒素酸化物)の排出を大幅に低減することが可能です。また、大規模発電施設用、家庭用LPガスの代替利用、そして水素を大量に抽出できることから燃料電池用燃料としての用途開発も研究されています。
さらに、物性がLPガスに近いことからLPガス設備の転用が可能であるため、供給インフラの設備投資が少なくてすむ結果、新規燃料としては市場への浸透が比較的容易と考えられています。もちろんゴムへの膨潤・溶解作用がネックとなっておりますが、DMEに対応できるゴム材やシール材の研究開発も進められており、目処はたっています。

 

――DMEの燃料用途の実用化に向けて、課題となることは何でしょうか?

DMEを燃料として利用する場合、最大の課題は重量あたりの熱量がLPガスの約6割、軽油の約7割程度と低いこと。これを解決するためには、製造工程や利用工程でのエネルギー効率を最大限に高め、輸送工程の効率化を進めることが求められています。また、個別の用途で見た場合DMEディーゼル車の開発ではDMEの性質をいかにディーゼルエンジンに適応させるかが課題になっています。ディーゼルエンジンの内燃機関は液体の燃料を噴射して燃焼室へ送り込み、着火することが特徴。ところがDMEは沸点が低く、低温で制御しないと気化してしまいます。また、潤滑性の低い液体であるために噴射機関の摩耗が危惧されています。とは言え、これらの問題は解決できると期待しています。実際、開発に携わっているエンジニアの皆さんはメカニズムの改良に取り組まれていますし、今年はついにコープ低公害車開発さんを始め、伊藤忠エネクスさんも参加されている中大型DME自動車の実用化研究の第2ステップとして、4トン積みDMEディーゼル車が神奈川・筑波・新潟の3点間を走行するテストがスタートします。テスト期間は2年間を予定しており、実用化に向けてある程度の結果は見えてくると考えています。また、ボイラー、タービンなど直接燃焼に使用する場合、DMEの潤滑性などは問題になりません。1年間の実証実験は続きますが、現時点でも実用化できそうな手ごたえは感じています。

 

――最後に、伊藤忠エネクスの社員に向けてメッセージをお願いします。

エネルギーは、人類が発展するために必要不可欠なもの。いまや、エネルギーの確保と環境保全の両立が社会的要請となっています。単にエネルギー源を販売するだけではなく、エネルギーを産むところから、消費した後まで全体を戦略的に見ることも大切になってくるのでは、と感じています。
DMEに関しては、エネルギー源として認知されていくために、私たちやエネクスの皆さんも含めた利用技術開発に関わる者が、利用者に対して今まで以上にメリットをPRしていく必要があるでしょう。

 

※1 :セタン価
ディーゼル機関用燃料の発火性を表す数値。セタン価が高い燃料は、始動性が良く、燃費が良い。また、馬力が上がり、排気ガスがきれいになるという効果が得られる。

※2 :EGR(exhaust gas recirculation)
排気ガス再循環装置のこと。排気ガスの一部を再燃焼して有害成分を少なくする効果がある。