伊藤忠エネクス株式会社

ダイバーシティ対談

~エネクスグループの多様性は次のステージへ~

今後、当社グループがイノベーションの創出に取り組むにあたって必要なのは、多様な視点や感性、知性、キャリア、価値観、行動力で構成された母集団としての豊かさです。この豊かさを育て、維持し、さらに高めていくために、当社グループはダイバーシティの強化に取り組み、より健全で持続可能な組織・風土づくりにも役立てていきます。

2019年6月、当社グループ初の女性社外取締役として、山根基世氏が就任しました。
NHKアナウンサーとして報道や教養番組等で活躍し、2005年に女性初のアナウンス室長に就任した経歴を持つ山根氏。そんな山根氏と当社代表取締役社長の岡田が「ダイバーシティ」をテーマに語り合いました。

公平性を考えながら
女性活躍の場を広げる

岡田:就任以来、女性も活躍できる会社を目指し、まずは他産業と比べて圧倒的に少ない女性社員を増やすことに力を注いできました。現在は全社員約650名中、女性社員は約120名と20%近くまで上昇し、ようやく公平な議論ができる環境が整ったと思っています。

山根:社外取締役に就任してから事業所を視察しましたが、女性社員を見かける機会も多く、皆さん生き生きと力を発揮しているのを感じます。

岡田:もともと男女に能力差はないですし、女性は働くこと自体に高い意識を持っていると感じることがありますね。山根さんはNHK時代に女性初のアナウンス室長を経験され、女性活躍の場を広げる改革を断行されたと聞きました。

山根:私の入局当時からNHKでは男性アナウンサーには地方転勤がある一方、女性アナウンサーは東京勤務が当たり前になっていました。2005年にアナウンス室長になった時に思ったのは、このまま女性が東京に集中していたら男性の不公平感が高まるのではないかということ。そこで女性の地方転勤を制度化しました。公平にして、男性にやる気を出してもらうことも目的の1つでした。

岡田:働き方を考える上で公平性は非常に重要ですね。

山根:公平性でさらに重要だったのが、女性にも男性と同等の成長機会を与えることです。地方の小さな局では、営業や様々なスタッフに支えられている放送の仕事をトータルに見ることの大切さや、組織を認識し、そこで果たす自分の責任を自覚することができます。

また、地域の人々の暮らしぶりや日々の関心事を伝えていくうちに放送人として自分がやるべきことに気づくのです。思い切った改革でしたが、意欲ある女性たちが組織の中で長く働き、力を発揮し続けていくためには絶対に必要という危機感が背中を押しました。

岡田:貴重なご経験ですね。この観点でもう1つ考えていかなくてはいけないことは、男女が一緒だという考え方や、一言で女性はこうあるべき、男性はこうあるべきという考え方も違うということです。社員が同等にフェアに働くためには少し工夫が必要だと思っています。

山根:フェアの概念も1人1人違いますし、百人百様であって、男性と女性でも違って当然です。

岡田:まさに多様性ですね。企業として、いろいろなバリエーションを考えていかなくはいけないと思っています。

多様な人材が育ち合い
エネルギーの満ちた会社へ

山根:多様な人材を育てることについてはどう考えていますか?

岡田:「人材を育てる」というよりも、「人材が育つ環境を整える」という方が私の考えに近いですね。また、「人材を育てる」としても、育てる過程では双方向で得るものが多いのではないでしょうか。育てていると思っている側も必ず相手から影響を受けています。そこが非常に重要なポイントだと思います。

山根:まさにそれが教育の本質ですね。私の尊敬する教育者の方が「教育とはお互い命の響き合い」という言葉を残されています。これは、どんな組織で、誰が誰を教育するにしても、お互いが共鳴し合い、お互いが成長していくという意味で、この言葉に出会って深い感銘を受けました。

岡田:双方向に影響がある「育ち合い」が起きれば、会社の中にエネルギーが充満していきます。それが会社の持つエネルギーの総量になり、企業価値の向上にもつながっていくと思います。女性が輝くと男性も輝く、若手が育つと中堅、ベテランも育つ、そんな会社を目指していきます。

会社の中でエネルギーの響き合いが生まれるためには、心の中に「相手を驚かせてやりたい」という気持ちがあるかどうかが大切です。そういう気持ちがあれば、新しいことを試みて周囲を驚かせ、共鳴する人々を巻き込み、そのエネルギーがまた自分へのいい刺激となって還ってきます。だから私は、当社グループ社員には心に鎧をつけず、素の自分を出して伸び伸びと仕事をしてもらいたい。誰でも持っている「ちょっとヘンでユニーク」な特長を表に出し、多様なオリジナリティを発揮してもらいたいと思っています。

一人ひとりの違いを認め、
お互いに尊重し合える環境を

山根:エネクスグループの多様性には岡田さんの大らかなリーダーシップを感じます。

岡田:私は単純に「窓を開ければいい」と思っているだけなのです。窓から外気を入れ、会社の中を世の中と同期させればいいと。もちろん開いた窓からは多様なものが入ってきますが、そこが大事なところ。生まれたばかりの赤ちゃんは何でも口に入れ、それで抵抗力が生まれて生きる力が育つように、会社も無菌状態ではたくましく育ちません。いい会社になるために窓を開け、世の中と同じように多様性と創造性が豊かな状態にしていく、それが私の方針です。

山根: 多様性を突き詰めて考えると、基本は一人ひとりの尊厳を大切にすることだと思います。男女問わず、社員の皆さんがエネクスにいる理由、果たすべき役割と自分にできることを真剣に考え、大きな目標、いわば志を持つことが大切です。それを見つけることが出来れば、隣の人と自分を比べて小さな競争をしなくて済み、自分の目標を見据え、自信を持って日々努力を積み重ねていけると思います。エネクスにはそういう気づきが出来る環境と経験を若い人にたくさんあげてほしい。そうすれば仕事の本当の面白さに気づき、人生が楽しくなるのではないかと思います。

岡田:「多様性」という言葉に振り回されるのではなく、もっと仲間に興味を持ち、相手が自分とは違うことを自覚し、その違いをお互いに面白がり、大事にすることからスタートして欲しいと思います。私も社員の声に耳を傾け、いい刺激と影響を受けながら、一人ひとりが力を発揮できる環境をつくり、エネクスで働いて良かったと思ってもらえる会社にしていきたいと思います。